ライトノベル感想レビュー日記

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私の読んだライトノベル・小説の感想、レビュー。 個人的好みがもろに出ています。それでも良いという方はお読みください。おすすめ人気ライトノベル、ランキング、二次創作もあり。アニメ化情報も。

はぴねす!SS『魔力の行方』|第十一話

はぴねす!SS『魔力の行方』|第十一話






―瑞穂坂学園、女子寮『杏璃の部屋』




「・・・・・・よしっ!」

雄真と別れて寮の部屋に戻った杏璃は、普段着に着替えて春姫の部屋を訪ねる準備を終え、気合を入れていた。


「・・・絶対に問い詰めてやるんだからっ」


あれほど様子が変貌する悩みなのだ、そう簡単に話してくれるとは思っていない。
しかも春姫の場合、相談などせず自分の内に溜め込む事が多い。


だがっ!!


ライバルであり親友の非常事態に何もせずにいられる訳ないでしょ!!


「・・・柊杏璃、行きますっ!!」


そう言うと、杏璃は戦場(春姫の部屋)へと向かっていった。




―瑞穂坂学園、女子寮『春姫の部屋』の前



コンコン

「春姫〜、居る〜?」


ガサガサガサ

「う、うん。居るけど・・・何、かな?」


「昨日、調子悪そうだったでしょ。ちょっと様子を見にきたのよ」

「心配かけてごめんね、杏璃ちゃん・・・」

「何言ってんのよ、春姫。困ったときはお互い様でしょ?」

「・・・うん。ありがとう・・・」

「で、調子はどーなの?」

「う、うん。もう大丈夫だよ・・・」


(―ったく、全然大丈夫そうな声じゃないじゃないの!)


「――大丈夫なら良かった。じゃあ、ちょっとお邪魔していい?」


「・・・えっ――ちょ、ちょっと待ってもらっていいかな?」

「いいわよ」


――三分後


ガチャ


「ど、どうぞ・・・」

「お邪魔するわね――ってあんた何で制服なのよっ?」

「えっ、お、おかしいかな?」

「昨日調子悪かったのに、今日も学園に行く気っ!?」

「・・・あ、そうだね・・・」

「―それに、制服、皺になってるわよ?・・・春姫、そのまま寝たの?」

「・・・・・・えと、」


(・・・いつもはあんなにキッチリしてるのに)


「あのね、春姫」

「・・・うん?」

「あたし、まわりくどいのは嫌いだから、単刀直入に言うわよ?」

「・・・な、何かな?」


「――何があったの?」


「・・・・・・・えっ!?きゅ、急に何を言うの、杏璃ちゃん。昨日のことなら、ちょっと体調が――」

「・・・ごまかさないでよっ!」


ビクッ

「ど、どうしたの杏璃ちゃん。急に大声出したらびっくりするよ」


「・・・・・・春姫。あたしたち友達――ううん、あたしは春姫のこと親友と思ってる」

「・・・急にどうしたの、杏璃ちゃん。もちろん私も、杏璃ちゃんは親友だと思ってるよ?」


「じゃ、話して」


「――え、何をかな?」

「だから、ごまかすのはもうやめて。あたしが気がつかないとでも思ってた?」

「・・・・・・」

「ほら、聞いてあげるから、ちゃんと話しなさいよ」

「・・・・・・」

「まさか、親友に話せないとかないわよね?」

「・・・・・・」

(ヤバっ、ちょっといきなりすぎた?)


「・・・わ・・・わ・・・たし・・・」

「・・・えっ、うんうん。続けて」



「・・・わかんなく・・・なっちゃった・・・の・・・」

「いま・・・まで・・・もくひょう・・・ううっ・・・うう・・・」


「杏璃ちゃーーんっ!!」

ガバッ!!

「わたし、どうしたらっ!!今までやってきたことっ!!魔法っ!うわーん!!」



それから、あたしは取り乱す春姫を落ち着けながら全てを聞いた・・・・・・





(えっ、えっ、えぇぇぇぇ!!今まで春姫が頑張ってきた目標が雄真で、、あたしとの勝負を見てショックを受けて逃げてぇ!?)

(えと、でも雄真は『流身術』が使えて、魔法力はあたし以上で・・・ってこれは機密だったわね。えええええっ!?あたしにどうしろってのよ!?)



「・・・私、ずぅーっと”あの人”を目指して頑張ってきたの。それで、ようやく会えて・・・・・・でも・・・もう私どうしたらいいのか・・・ううっ・・・」

「・・・・・・」

(重いっ、重いわっ!こんな話、想像してなかったわよーっ!)

「・・・あ、杏璃ちゃん?」


(っ!?こうなったら――)


「春姫っ!!うじうじしてても始まらないわっ!!直接、本人に問いただすのよーっ!!」

「えっ。ええぇえぇーーっ!?」






―瑞穂坂学園、校門付近



「・・・雄真は、御薙先生のとこにいるはずよっ!」

「・・・うん」

(はぁ・・・勢いでここまで来ちゃったけど、春姫と雄真を会わせて大丈夫なの?―って言うか、雄真の詠唱魔法がしょぼいのは『流身術』ばっかりやってたからよね・・・、でもそれは言っちゃダメで・・・あーっ!ややこしいわっ!)


春姫はというと――

最初は嫌がってたものの、今は先導する杏璃の後ろをトボトボとついてきていた。






―瑞穂坂学園、”御薙教諭研究室”



「む〜り〜だぁ〜〜」

ばたっ


俺は、本日3回目のダウンを敢行。机に突っ伏した。


パンパン

「ほらほら、勝手に休憩しない。ただでさえ時間が足りないのに、この調子じゃ1週間後にクラスEなんて夢のまた夢よ?」

「・・・あのさ、母さん」

「何かしら、雄真くん」

「・・・このレベルでこの量の魔法式を使いこなせるようになるには、半年くらいかかると思うんだけど・・・」

「あら、いい読みしてるわね。正解よっ☆」

「正解よっ☆、じゃなーい!!どーすんだよ!?1週間でクラスEなんて到底無理、つーか無謀だって!!」

「はいはい、そう怒鳴らない。大丈夫よ、この1週間で半年分詰め込むから☆」

「大丈夫じゃねー!!つか、☆の意味がわからねーっ!!」



コンコン



「あら、お客さんかしら?」

てくてくドアの方に歩いていく母さんを目で追いつつ、こんな日曜に学校に来る珍しい奴を目に留めようと視線を向けると―



ガチャ


「あらあら、二人ともいらっしゃい」

「・・・・・・」


―昨日を同じ面子が立っていた。





「はい、どーぞ♪」


ご機嫌な母さんが、俺たち(俺、神坂さん、杏璃)が席についたテーブルの上にコーヒーが入ったカップを置いていく。


ちなみに、
「あら〜、神坂さんに柊さん、いらっしゃい♪」「あっ、そうそう。昨日は紅茶だったから今日はコーヒーがいいわよねー。もちろん飲むわよねー?」「ささ、みんな座って座って♪ゆ、小日向くんはこっち手伝ってー」
というほぼ昨日と同じ流れである。(飲み物が違う点を除けば)


俺はとりあえず、カップに口をつけコーヒーを一口ふくむ。

「・・・にがっ」

やっぱりブラックはダメだ。
コーヒー本来の風味を楽しめるとは言え、いかんせん苦すぎる。ここは、素直に用意された砂糖とミルクを入れるとしよう。



「・・・あ、あのさ、雄真」


昨日はあれだけぎゃーぎゃーうるさかった杏璃が、部屋に入ってきてから一言もしゃべらず、ようやく口にした一言がこれだ。

しかも、何か二人とも妙な雰囲気をかもしだしていて、昨日とは明らかに違う。
神坂さんなんて、ずっと俯いたままだ。


「・・・な、何だよ?」

あまりに雰囲気がアレなので、思わず警戒してしまう。


「・・・えと、その・・・雄真はずっと昔、女の子を助けたことってない?」

「は?」

何だ唐突に。

「・・・だから、子供の頃とかに・・・いじめられてるのを助けてあげたとか・・・最後に魔法で元気付けてあげたとか・・・」

「・・・えらく具体的だな」

「いいでしょ、そんなことっ!・・・で、どーなの?」


・・・俺が魔法使いを目指すきっかけになった”あの出来事”と一緒の展開だけど――

「・・・確かに心当たりがあるけど、なんでそれを杏璃が知ってるんだ?」


「・・・じ、実はねっ!その女の子が、は、は、はる――――」


ガタッ


「やっぱりだめーーーっっ!!」


ダダダッガチャダダダダダダッ



「ちょ!?春姫っ!?」
「神坂さん!?」


――残像ができそうな勢いで、神坂さんは走り去っていった。


・・・はっきり言って、意味が分からん。




―で、
杏璃は、神坂さんが出て行ったドアを見て「はぁ」とため息をついたかと思うと、
キッと俺の方を睨んできやがった。


「・・・な、何だよ?」

何故、俺は睨まれてるんだ?



「・・・あんたが悪いんだからね。そうよっ!!みーんな、あんたが悪いのよっ!!」



「はい?」

俺、何かしたっけ?


杏璃はツカツカと俺の傍まで歩いてくると、


ガシッ


椅子に座っている俺の両肩を掴み。


「?」


ガクガクガクガクガクーッ


「―っ!?あがっ!?」


勢いよく前後に揺らし始め――って、やめれーっ!


「はい?じゃないわよっ!!あんたが原因なのよっ!?春姫がずーっとあのまんまだったらどーすんよっ!?ど・う・に・か、しなさいよーっ!!」


ガクッ!ガクガクガクガクーッ


「ちょっ!?や、やめっ!!やめろーっ!――ま、魔法式が―今日覚えた魔法式がぁぁあっ!!」



――五分後



「うう〜っ。ぎもぢわるいぃ〜」

頭が激しくシェイクされ、フラフラする〜
つか、今日覚えた魔法式、半分くらい飛んだぞちくしょー



ちなみに、杏璃は母さんに止められ、ちょうど今コーヒーがまた注がれたとこである。



「――で、ヒトの頭を激しくシェイクしてくれた杏璃くん?理由を聞こうか」

「・・・ふん。あんたが悪いのよ」

「さっきからそればっかじゃねーか!きっちり理由を言えっ!!」

「なによ偉そうにっ!命令するんじゃないわよっ!」

「あのな―――「ちょっといいかしら?二人とも」」


「「っ・・・・・・」」


「はいはい、いい子ね。本当は、わたしが口をはさむことじゃないんだけど・・・いつまで経っても話が進みそうにないからね・・・」

「「・・・・・・」」

「・・・柊さん。あなた、神坂さんがあんな風になってる理由を知ってるわね?しかも、原因は小日向くんにあるんじゃないかしら?」

「うっ」

「・・・それで、何とかしようとして、とりあえず一緒に小日向くんを訪ねてきた。違う?」

「うう〜っ」

(あの意味不明な行動の原因が俺?なんで??)

「ほら、小日向くんも意味分からないって顔してるし、とにかく話してくれないかしら?」


「・・・・・・わかりました」



それから、杏璃の口から全てが語られた。




「・・・え〜と、神坂さんが”あの時”の女の子ってことはわかったけど・・・、それが何でショックを受けて俺から逃げるんだ??」

「っ!?あんたそれ本気で言ってんの!?」

「ん?何かおかしいのか?”覚えてる?”とか”すっごい久しぶり!”とかが普通の対応だと思うんだが・・・」

「・・・あんたねぇ。春姫はあんたに憧れて、目標にして、魔法の勉強を続けてきたのよ?―で、せっかく再会したと思ったら、あんたはあたしにボコボコにされてるわけ。そりゃ、ショックも受けるわよ」

「・・・ふむ、つまりは俺が神坂さんの理想からかけ離れていたから、ショックを受けていると。・・・でも、さっきは何で逃げたんだ?」


「・・・そうねぇ。神坂さん真面目だから、自分で勝手に理想を創って失望したことを気にして、当人に悪いと思ってるんじゃないかしら?・・・それだけじゃない部分もあると思うけどね」

「あたしも御薙先生の言う通りだと思う。―春姫ったら、変にお堅いところがあるし」


「・・・なるほど。ずずっ」

俺は、砂糖とミルクを入れたコーヒーを一口すする。


「何のんびりコーヒー飲んでんのよっ!あんたが原因なんだから、あんたしかどうすることもできないのよっ!?」

「わーってるよ。・・・でもなぁ、一体俺にどうしろと?」

「・・・そ、それは・・・」

「理想と違っててごめんなさいって謝ればいいのか?」

「うっ」

「・・・それとも、他に――」

「・・・うーっ。そんなことわかるわけないでしょっ!!自分で考えなさいよっ!」

「・・・お前なぁ。他人に丸投げかよ・・・」



――で、すったもんだのあげく。

「とりあえずっ!春姫と話してきなさいよねっ!!」
「小日向くん、神坂さんと話してらっしゃい」

という、俺の意思を完璧無視した結論がでてしまったのだ。

まあ、とにかく俺と神坂さんが話してみないとわからん、つーことに落ち着いたわけだな。


でもなぁ、話って一体何を話せばいいんだ?

うーん。


「雄真っ!難しい顔してないで、とっとと春姫に会いに行きなさいよっ!」

「ん、ああ・・・」

うーむ。


「柊さん、ちょっとそこから離れてくれないかしら?」

「え?―あ、はい」

「・・・エル・アムダルト・リ・エルス――」


む。
何か詠唱が聞こえるぞ――この声は、母さん?


「カルティエ・ラ・アムティエト――いってらっしゃい♪」

「えっ!?ちょ、母さ――」







―魔法科校舎、屋上



その少し前。



「・・・・・・はぁ・・・また、逃げてきちゃった・・・・・・」



研究室を飛び出した春姫は、昨日と同じく魔法科校舎の屋上にやってきていた。



「・・・わたし何やってんだろ・・・小日向くんに失礼なことばかりしちゃってるよね・・・」


一晩いろいろ考えたが、結局何も答えはでなかった。

挙句には、平静を装っているのを杏璃に見抜かれ、泣きつく始末。
杏璃に言われるまま、小日向くんに会いにきたはいいものの、この様だ。

胸にポッカリと大きな穴があいたみたいだよ・・・


「・・・・・・はぁ・・・これからどうしよう・・・・・・」

春姫のつぶやきは、春の風に乗って消えていった。





そのすぐ後、春姫の座るベンチの後ろに雄真が転移。

「―さんっ!?――っと、ここどこだ?空?・・・屋上か」

どうやら、母さんによって無理やり転移されたようだ。


ったく、考えがまとまってないのに・・・

ここに神坂さんが居るのか・・・

ぐるりと見回したところ、前方のベンチに人影がある。


どうやら俺が転移したことにも気付いていないようだ。

ダークなオーラを纏った神坂さん・・・・・・はっきり言って話しかけたくねー

「・・・帰りてぇ・・・」




――それから、微動だにしない神坂さんを見続けて五分が経過・・・


・・・ちょっと待てよ?
誰も居ない屋上で、一人の女の子を後ろから見つめてる男っていう状況・・・端から見たらヤバくね?

いやいや、俺にはそんな気まっったくないんですよ?
単にそういう状況になってしまっただけで――いやいや。


―この状況はマズイ。

もし、誰かに見られようものなら・・・

響き渡る悲鳴→パトカー到着→誤解だぁあ!!

という展開が目に見えている・・・


・・・これは、早々にこのミッションを終わらせる以外に道はあるまい・・・

「・・・い、行くぞ」


俺は一歩、また一歩と慎重に神坂さんに近づいていく。


この光景を端から見たら口を揃えてこう言うだろう・・・

『美少女に迫る変質者』と――



「―あっ、あの!?神坂さんっ!??」

いろんな部分で声が裏返ったりしてるが、この状況で声をかけただけで勘弁してほしい。


ビクッ

神坂さんは一瞬ビクッとしたあと、ゆっくりとこちらを振り返り―

――そして、そのまま・・・・・・固まった。


―そのまま十数秒経過。


「・・・・・・あの、神坂さん?」


ハッと我に返ったらしい神坂さんは――

「こ、ここっ、小日向くんっ!?」


明らかに動揺した様子で、オロオロしまっくている。

―まあ、悩みの種がいきなり現れたんだから当然か・・・


「・・・あのさ――ちょっと隣いい?」

「えっ!?あっ、は、はいっ!―ど、どど、どうぞっ」


言われて俺は、神坂さんの隣にちょっと距離をとって腰を下ろす。

ふぅー。
・・・つ、疲れた。

ちょっと休憩してから本題に入ろう・・・



――両者無言のまま、数分が経過したころ



そろそろ俺から話かけようかとしたのだが―


「あ、あのっ!小日向くんっ」


以外にも神坂さんから話かけてきた。


「き、昨日から失礼なことばかりして、ごめんなさいっ!」

―そして、いきなり謝られた。


「えっ、いや。別に気にしてないから・・・」

「急に逃げだしたことだけじゃないのっ!」


「・・・もしかして、俺の魔法が思ってたより相当しょぼかったこと?」


「え、ええっ!?何でそのこと――」

「――ここに来る前、杏璃から全部聞いたから」


「・・・そうだったんだ・・・全部聞いちゃったんだ」


「・・・わたし・・・すっごい自分勝手なことで小日向くんを傷つけてたの・・・」

「・・・・・・本当にごめんなさい・・・」

神坂さんは手を握りしめて、俯いてしまった。




うーん・・・このあと何を言えばいいんだ?

とりあえず励ますとか?
それともこっちも謝った方がいいのか?

でも、何を言っても無駄な気がする。


ん?
―そうか、何を”言っても”無駄なら――



「―エル・アムダルト・リ・エルス・ディ・ルテ・・・」

ゆっくりと魔力を浸透させるように、詠唱を開始。


手のひらから出たボール状の光がゆっくりと空へ上っていく。

「カル・ア・ラト・リアラ・カルティエ!!」


上空でボールがはじけ、光の粒子となって降り注ぐ。




「―こ、これって・・・」

いつの間にか神坂さんは顔を上げ、俺の魔法に見いっていた。


―そう、”あの時”に俺が使った魔法。

―泣いている”彼女”を元気付けようと使った魔法。


あれから10年経った今、”彼女”にはどう見えているだろうか。



「ふぅ――ちょっとは元気でた?神坂さん」


この時、春姫には目の前の”彼”が、幼い日の”彼”と重なって見えた。


「・・・お、覚えてるの・・・?」


「・・・まあね・・・あの出来事は俺にとっても大事な思い出だよ」


「・・・そうだったんだ・・・覚えていてくれてるんだ・・・」

そう言って神坂さんは少し微笑んだ。




「・・・あのさ、神坂さん」

「な、何かな?」


「―俺にさ、時間をくれないか?」

「・・・?時間って?」

「神坂さんに追いつく時間」

「えっ?――あ・・・」

「時間かけても、追いつけないかもしれないし・・・神坂さんが目標としていた俺になれるかわかんないけど・・・頑張ってみるから、さ」


―げげっ、俺はなんてクサい台詞を吐いてるんだぁ!!


「だ、だからその・・・謝る必要なんてないからっ!俺がしょぼいのは事実だしっ!つか、こっちこそしょぼくてごめんなさいって感じだしっ!」


「・・・ありがとう」


「へっ!?な、何がっ!?」


「ふふっ、これからよろしくね。小日向くん」

「っ!?―こ、こちらこそよろしくっ!神坂さん」



目の前の”彼女”は、あの時と同じような満面の笑顔。


ミッションコンプリート――で、いいのか?


うーむ・・・



第十話へ  ⇒第十二話へ(制作中)


++++++++++++++++++++++++++++++++
☆★あとがき★☆

数ヶ月ぶりの更新・・・

リアルが忙しくて、全然書く時間がねぇす;;

やっとこさ、ボーナスでソニーの”mylo”ってやつを買って、通勤途中に書けるようになったのだ。。

で、
この話でやっと現状のキャラ全員の立ち位置ってのが決まりましたぁ。

今までは序章です、プロローグです。(長すぎ)

次からは、日常生活メインで進めていく予定です〜!

まあ、やっと題名の意味がわかってくるんでないかな?

では〜、また(^^)/



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はぴねす!SS『魔力の行方』|第十話

はぴねす!SS『魔力の行方』|第十話



□■━ 4月9日 ━■□



―小日向家、庭




「ええーっ!!この娘が師範代っ!?」

朝っぱらから、やたら元気な柊の叫び声が響く。



「まあ、驚くのはわかる。見た目がコレだからな。あとちなみに、詩織は俺らより年上だぞ?」

「っ!?なんですってーっ!どう見ても中学生にしか見えないわっ!」

「それもわかる。だが、事実だ」



「ふぅ・・・。初対面の者はいつもそういう反応じゃの。もういい加減飽きてきたわい・・・」
はぁ〜っと詩織はため息をつきながら、やれやれといった感じで手をブラブラ。



「まあとにかくじゃ。妾が”葉月流”師範代、『葉月 詩織』じゃ」



「あっ、えっと、瑞穂坂学園魔法科1年A組、『柊 杏璃』ですっ」


「むっ、瑞穂坂学園魔法科じゃと!?」

「あ、はい。雄真とは同じクラスで――」

「むぅ!?『雄真』じゃと!?名前を呼び捨てじゃとぉっ!!!」

詩織がいきなり叫びだした。


「おいおい、詩織。何でいきなり叫ぶんだ?名前のことなら、俺は呼び捨てでも特に気にしてないぞ」

「あら雄真。あんた、なかなか心が広いじゃないの。気に入ったわ。あたしのことも『杏璃』って呼び捨てでいいわよ?」

「何その上から目線っ!?」

「うるさいわね。あたしがいいって言ってるんだから、あんたは言うとおりにすればいいのよっ、ほらっ!!」

「あ、杏璃――って恥ずかしいわっ!!」


「お、おっ、おいっ!!あ、相棒っ!!」

「ん?なんだゼク。そんな切羽詰った声だし・・・て・・・っ!?」


そこに鬼が居た。


「ゆぅ〜うぅ〜まぁ〜あぁああああっっ!!!」

そしてその鬼の小さな口から、地獄の底の唸り声のような叫びが響き渡った。


溢れる光。
放出される魔力。

「わ、わ、妾の前でっ!!!何をいちゃいちゃしておるかぁあああっ!!!」


詩織の手足が、黄金色に輝き出す。
放出された魔力が、全て身体強化のみに消費され、
あたかも黄金色の鎧を纏っているかのよう。


――『本気モード』(俺が名づけた、文句あるか?)


過去に何度か目にしたことがある、詩織の最終形態。(※変身はしてません)


ヤバイ。
マジで、ヤバイ。

このままでは、俺の身体と小日向家がバラバラになっちまう。
いや、マジで。



「ちょっ!?何事っ?何が起こってんのよーっ!!」

詩織の魔力開放による暴風の中、杏璃はツインテールをぐしゃぐしゃにして地面に屈みこんでいる。



「し、詩織っ!!!おおお、落ち着けーっ!!お前はすごい勘違いをしてるぞ!?」

俺は暴風に吹き飛ばされないように、手ごろの岩?に掴まりながら叫ぶ。



「わ、妾だってっ!!妾だってなっ!!雄真とクラスメイトになって、いちゃいちゃとかしたかったんじゃあっ!!」


ゴォォォォォッ!!


一層激しくなる暴風。

もう、詩織が何を言ってるのかさえ聞こえん。


ゴォォォォォ・・・

「――ハァッ!!」



詩織の気合の声が聞こえると同時に、暴風は収まった。

凝縮された魔力が詩織の周りを取り巻き、ゆらゆらと空気を震わせている。



「――雄真よ。覚悟はよいな?」


「・・・はい?」

何の覚悟だ?


「妾の婿候補でありながら、他の娘といちゃいちゃしてた罪じゃっ!!」

「ちょっと待て、詩織っ!さっきのやりとりのどこに”いちゃいちゃ要素”があった!?」

「問答無用じゃあっ!!!」

ドッッゴォォン!!


詩織が消えたかと思った瞬間に岩から飛びのくと――
一瞬後には岩が粉々に。

「ちっ、避けおったか」


「うぉい!詩織っ!!俺を殺す気か!?」

「大丈夫じゃ。急所は外しておる」

「岩が粉々になる攻撃に、急所もクソもねぇだろ!?」


「・・・・・・。妾を信用するのじゃ」


「何その間っ!?信用できるかぁっ!!ゼクっ!!」

「あいよっ!」

「全力でいくぞっ!!」

「ハハッ!詩織とのガチバトルは久々じゃねーかっ!気張れよ、相棒っ!!」

俺はゼクの封印を解き、魔力を開放。
魔力を身体強化に注ぎ、手足が輝き始める。


「む。雄真、抵抗する気じゃな?」

「当たり前だ。高校入学早々に入院させられてたまるか!」

「そうか。そんなにそこの女子(おなご)が大事なのじゃな!?何たる不埒じゃ!不潔じゃ!!」

「なんでそうなるっ!?」

「妾の婿候補として、そのようなことは断じて認められぬ!!潔く裁きを受けるのじゃー!!」

「受けるかぁっ!!」


これを合図に、俺と詩織のよくわからないガチバトルが始まった。






「何なのよ、この二人・・・」

杏璃は目の前の光景が信じられず、唖然としていた。


雄真と詩織の言い争いを聞いていた杏璃は、何やら不穏な雰囲気を感じ、
現在は結界の外にいる。


「・・・これが、『流身術』――」

断続的に聞こえる打撃音。
粉々になる岩。
地面に穿たれる穴。

この惨状を作り出している二人の姿は、ほとんど肉眼で追うことはできない。


「それに・・・雄真のあの魔法力――」

感じ取れる雄真の魔法力は、あたしの10倍くらいは――ある。

同い年くらいの魔法使いで、あたし以上の魔法力を持っていた奴は今まで会ったことがない。
春姫でさえ、あたしより魔法力は低いのだ。

魔法力の高さが魔法使いの能力に直接関係していないとは言え、
やはり高い方が魔力を瞬時に取り出せるし、上級魔法も容易に使えるので、高いに越したことはない。

只者ではないとは薄々思っていたが、これで確定だ。

「・・・雄真、あんたもあたしのライバルよ!」






「ぐっ!?」

詩織の上段蹴りを腕でブロック。
その反動を利用して、詩織はくるりと回転。
逆から繰り出される裏拳を身を屈めて回避しつつ、俺は大きくバックステップ。

二人に距離ができ、一旦攻防が終了。


「どうした、雄真?先程から防戦一方じゃの?」

「くっ、魔法力は俺が倍以上あるってのに!」

スピード、威力等々が詩織と比べかなり劣っている。

「ふん。いつも言っておるであろうが。きっちり魔力を身体に浸透させぬと最大限の効果を発揮できぬと!」

「・・・じゃが、ここまで妾と戦り合うことが出来るようになっておるとはの。正直嬉しいぞ、雄真。それに免じて、次の一撃で”いちゃいちゃの罰”を終わらせてやるとしよう。何、そのレベルなら耐え切れるはずじゃ」

「前半部分は素直に褒められてる感じだが、後半部分が納得いかんぞ」

「お主は、全力で防御を考えておるだけでよいのじゃ。下手に小細工をすると大怪我するぞ?」

「話聞けよ!」

言い終わると、詩織は両手を身体の前に出し、一つのボールを両手で握るように構えをとった。
それと同時に、魔力が詩織の手に集中していく。


「くそっ!何でこんなことになってんだよ!」

俺は仕方なく言われたとおり、両腕をクロスして身体の前に組み、
さらに詠唱魔法での障壁も展開した。


「うむ。ではいくぞ!流身術奥義、『葉閃』っ!!!」

詩織の手に凝縮された魔力が一気に開放され――って、

「耐えれるかぁあああっ!!!」



ッドッゴォォォンンンーーッッ!!!


俺の視界が白い閃光でいっぱいになった後、
意識が闇の中に落ちていった・・・








「きゃははははっ!それ本当なの、詩織ー?」

「うむ。もちろん本当じゃ。あれは妾も笑いが止まらんかったわ。そういえばこんな話も――」


ゆっくりと浮上していく意識の中、
二人の少女の喋り声が聴こえる。


「・・・・・・うー・・・ん・・・・・・」

俺は、ぼんやりした頭を左右に振りながら、
上半身を起こす。

見ると、俺はソファに寝かされていたようだ。


ダダダダダッ

「に、兄さんっ!気がついたんですね!気分はどうですかっ?」

足音が聞こえたかと思うと、目の前にすももの顔があり、
心配そうに顔を覗き込んでくる。

「・・・ああ、何とか大丈夫みたいだ」

頭はちょっとボーっとしているが、どこも痛い箇所はない。

「良かったぁー」

ホッとしたように笑みを浮かべるすもも。

「悪いな、すもも。心配かけて」

俺はすももの頭をくしゃくしゃっと撫でてやった。

「えへへへー」

目を細めて、くすぐったそうに笑うすもも。
可愛いやつめ。



「さてと――」

俺はソファから立ち上がり、詩織と杏璃がいる縁側へと近づいていく。

「きゃははははっ!――んっ?あ、雄真起きたのね!」
「おお、雄真。やっと起きよったか」


「・・・・・・」


「どうしたのよ、雄真。何で無言なのよ?」
「どうしたのじゃ、雄真。何とか言わんか」


「・・・二人、いつの間にそんなに仲良くなってんだよ・・・」


「あんたがブッ倒れてる間に、あたしが誤解を解いてあげたのよ!感謝しなさいよねっ!!」

「うむ。ただのクラスメイトだそうじゃな。そうとわかれば、新しい妾の弟子じゃ。打ち解けるのは当然じゃろう」


「じゃあ、さっきのバトルの意味は?」

「よ、よいではないか!結果としては、雄真の上達を身をもって体験出来たのじゃし!」
「最後のアレは?」

「は、葉閃のことかの?お、奥義を見れたのじゃからお得じゃったろ!」

「お得じゃねぇ!死ぬかと思ったぞっ!!」

「だだ、大丈夫じゃ!雄真のレベルなら、耐えれるじゃろうなぁとは思っておったわ!」
「適当過ぎっ!!ノリで奥義なんか撃つな!!」


「はいはい二人ともっ!過ぎたことはもういいじゃない!結構時間経っちゃったけど、これからどうするのよ?」

「う、うむ。良いことを言うではないか、杏璃よ。妾も、過ぎたことを言い争ってる時間は無駄じゃと思うな」

そう言いながら、詩織はちらちらと小動物のように俺の様子を窺っている。


「――ったく、わーったよ。まあ、何だかんだでいつものことだしな。で、どうすんだ?鍛錬の続きするのか?」

それを聞いた詩織は、ホッとした様子で、

「いや、随分時間が経ってしまったからのう。今日はここまでじゃ。杏璃の本格的な鍛錬は明日からじゃな」

「そか。じゃあ俺は、飯食って学校行くかな。遅れたら、かあ、じゃなくて御薙先生が鬼と化しちまう」

「あたしは用事があるから寮に帰る」

「おお、じゃあ途中まで一緒に行くか?飯も食ってけよ。どーせ、か〜さんはお前の分も用意してると思うし」

「え、そーなの?じ、じゃあ残すのももったいないし、ご馳走になろうかな」

「ああ、遠慮はいらねーぞ。詩織は――って、あいつもうシャワー行ったのか」

「あ、あたしもシャワー借りていい?さっきの暴風で髪がくしゃくしゃになって―」

「じゃあ、先に使っていいぞ。場所とかはすももに聞いてくれ。俺はその後でいい」

「ありがと、わかったわ」






―小日向家、リビング



「「「「「いただきま〜す」」」」」

都合5人分の朝飯が並べられたテーブルを囲み、いつもよりプラス1人の朝食が始まった。


「杏璃ちゃん、お味の方はどうかしらー?」

「あっ、はい!とってもおいしいですっ!」

「うふふ、ありがとう。おかわりもあるから、どんどん食べてね♪」

「ありがとうございます!」


か〜さんは、ニヤニヤと微笑みながら、こちらを向き、

「んふふふ〜。雄真くんも隅に置けないわね〜。こーんな可愛い娘をお家に連れてくるなんて〜♪」

「ん?連れてきたのは俺だが、こうなった原因は詩織だぞ」

「またまた〜。照れなくってもいいじゃない〜。ク・ラ・ス・メ・イ・トなんでしょ?」
このか〜さんの言葉に、ぴくっとする人物が約2人。


「た、確かにクラスメイトだが。言っとくけど、か〜さんの考えてるようなことは一切ないぞ?」

俺の言葉に、ホッと息を吐く人物も約2人。
一体何なんだ。


「でもでも〜。雄真くんがお家に連れてきた女の子なんて、詩織ちゃんか準ちゃんくらいじゃない?それが、会って数日のクラスメイトを連れてくるなんて〜、何かあると思って当然でしょ?」

「何もないっての!詩織の弟子になったんだから連れてきただけ!あと、準は男だっ!」
「あれ?そーだっけ。ぶ〜、ゆーまくんつまんな〜い」

ぷぅと頬を膨らませて不満顔のか〜さん。


「んなことより、すもも。ソースとってくれ」

「はい、兄さん」

「あっ、あたしは醤油ほしい」

「ん。ああ、ほれ」

「ありがと」



「っ!?ゆ、雄真っ!?何で目玉焼きにソースかけてるのよっ!?」

「はあ?何言ってんだ、杏璃。目玉焼きにはソースだろ」

「おかしいわよっ!目玉焼きには醤油よっ!!」

「妾は、何もかけぬぞー」

「うるせーな。何かけようが個人の自由だろーが!」

「ダメよっ!ソースなんてかけたら食べられないわっ!!」

「何もかけぬ方が、卵本来の味をじゃな――」

「お前が食うわけじゃねーだろが!!俺はソース派なんだよ!」

「わかったわよっ!そこまで言うんなら、醤油かソースか、魔法で勝負よっ!!!」

「何もかけない派はないのかの〜?」

「アホかお前はっ!!昨日勝負したばっかじゃねーか!意味わかんねーよ!」

「アホですってぇー!!雄真のクセにっ!!」

「・・・妾は、無視か・・・しくしく」


「あらあら♪二人ともすっごく仲良いわねぇ〜」


とか何とか、いつもよりは随分騒がしい朝食を済ませて。






―瑞穂坂学園、女子寮玄関前


あの騒がしい朝食の後、
俺は、杏璃と一緒に学校への通り道である瑞穂坂学園の女子寮まで来ていた。

「ほほう。これが女子寮か」

俺は玄関前に立つと、しげしげと寮を観察する。
うむ、結構良い造りだな。

「なに、ジロジロ見てんのよ。いやらしいわねー」

「何その非難の眼差し!?俺何か悪いことした?なぁ、したのか?」

「・・・・・・目が怪しいわ・・・」

「っ!?俺の目が、目が否定されたよっ!?」

「あはははっ!冗談よ、冗談♪」


「――ったく。で、お前は用事があるんだろ?」

「うん。とっても大事な用事」

「そっか。じゃあ、俺は学校行くわ」

「ちょっと待って。明日も雄真の家で鍛錬なの?」

「ああ、そーなるな。今日と同じくらいの時間に来てくれ」

「わかったわ。じゃあ、また明日ね」

「おう、また明日」

軽く挨拶しながら、俺は杏璃と別れた。





第九話へ  ⇒第十一話へ(制作中)


++++++++++++++++++++++++++++++++
☆★あとがき★☆

いや〜、更新できてよかったぁぁあーっ!!⇒織田裕二風に

う、おほんっ。
まあ、とにかく順調に更新できて何よりですわw

カムカム的には早く、設定やらキャラとかの紹介が終わって、
アホアホムードの学園生活をやりたいんですがね・・・。

かっなり重要な、春姫との関係がまだ決着してないんだなこれが。

次の話では、杏璃と春姫のやりとりがメインの予定だよぉ。

ではでは、またノシ


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はぴねす!SS『魔力の行方』|第九話

はぴねす!SS『魔力の行方』|第九話




―魔法科校舎、屋上




「・・・・・・はぁ・・・逃げてきちゃった・・・・・・」




魔法演習場を飛び出した春姫は、魔法科校舎の屋上にやってきていた。




春姫は屋上に設置させているベンチの一つに座り、春の心地よい風を受けながら物思いにふけっている。



脳裏に浮かぶのは先ほどの光景。
杏璃に一方的にやられる”彼”こと小日向雄真だ。

憧れで目標にしていた”彼”のイメージとあまりにもかけ離れた姿に、気がついたときには演習場を飛び出していた。


・・・手加減・・・してたわけじゃないよね・・・・・・とてもそんな風に見えなかったもん・・・


あの調子では確実に杏璃の勝ちだろう。


・・・私・・・今まで何やってたんだろ・・・
・・・ずっと先にいってる”彼”を目指して頑張ってきたのに・・・


理性の部分では、自分勝手なことを言っているとわかっているのだが――
”気持ち”の部分ではやはり納得がいかなかった。


・・・会えたのはとても嬉しい・・・けど・・・

・・・これからわたしは誰を目標に頑張ればいいの?・・・


もちろん、春姫の周りには鈴莉をはじめ目標とすべき魔法使いはたくさんいる。
だが、春姫が10年余り目指してきたのは言うまでもなく”彼”なのだ。

”彼”の存在なくしては今の春姫はないと言っても過言ではない。
どこまでも純真で、一途。
乙女心とは、複雑でとても厄介なものなのだ。






―魔法練習場、『ステージ』




「ちょっっとぉ!!何で春姫が居なくなってるのよーっ!!」

「あー、うるせーな。俺が知るわけねーだろがっ!」

相変わらずギャーギャー喚き散らす柊。
ったく、こいつのテンションの高さはハチに匹敵するぞ。


「春姫ちゃんなら、演習が始まってすぐ出てったわよ?」

実況席に居たはずの母さんがすぐ傍でニコニコと微笑んでいた。
忍者かこの人は。

「何だか、顔面蒼白ですごくショックなことがあったように見えたわよ〜」


「「え?」」

顔面蒼白?ショック?
今の勝負にそんな風に思う場面なんてあっただろうか?

俺は訳が分からず、首を捻っていると――


「・・・なるほど、わかったわ。原因は雄真、あんたよーっ!!」

「はぁ?」

何でそーなる。

「とぼけたって無駄よっ!春姫のことをいやらしい視線でジロジロ見てたんでしょっ!!この変態ーっ!」

「アホかお前は。勝負の最中にそんなことしてる余裕なんかねーっての」

「あ、アホですってぇー!!じゃあ原因は何だっていうのよっ、あんたは!!」

うーむ。
顔面蒼白・・・ショック・・・原因・・・原因かぁ。

結論。

「わからん」(キッパリ)


「ふんだ!人のことアホとか言っときながら何よそれはっ!」

「むっ。今日知り合ったばかりなのに、んなこと分かるわけ――」

パンパンッ

「はいはい、そこまでよ二人とも。仲良くしゃべってるところ悪いんだけど、ちょっと二人に言いたいことがあるのよ。いいかしら?」


「ちょっ、御薙先生っ!?何であたしがこんなのと「柊さん。とても大事なことなの」」
母さんの真面目な物言いにさすがの柊も「うっ」とひるむ。

――と、
柊を黙らせた母さんは俺の方に向き、

「小日向くん。演習前に言ったわよね?”アレ”は使っちゃダメだって」

ん?”アレ”って流身術のこと、だよな?

「えっ、でも、詠唱魔法の訓練の一環だからって意味じゃ?絶対とは言ってなかったし」
ここで、母さんはふぅ〜と溜息をつきながら――
「――詩織ったら、全く説明してないのね・・・」

説明?なんだ?

「あのね、小日向くん。”アレ”は魔法業界において、最重要って程ではないけど機密扱いの術なのよ」

「機密扱い?」

「そう。術の危険性を考慮して、ランクA”重要”に指定されているわ。使い手には術を秘匿する義務もあって、義務を怠ると処罰もあり得るわ。――簡単に言うと、人前で安々と使っちゃダメってこと」


「・・・えと、ってことは・・・」


「・・・そうね・・・もし、このことがバレたら――おそらく”退学”ね」


「・・・・・・た、た」


「退学ぅーーっ!?」

しゃれになんねぇ〜っ!!
まだ入学式しか行ってねーのにっ!!
俺の高校生活、これで終わりかよっ!?



「ちょっと雄真っ!さっきから、機密やら退学やら二人で何話してるのよーっ!!」

「ん?ああ、柊か・・・・・・ん?――柊、柊・・・・・・そうだっ!!」

「きゃっ!いきなり大声出さないでよっ!」


俺としたことが、失念していたぜ。フフフフフッ

要は流身術を使ったことが”バレ”なきゃいい訳だ。
運の良いことに、目撃者はたった一人。

こいつをどうにかすれば・・・クケケケケケケッ


ポカッ

「いてっ!」

「こらっ、小日向くん?考えてることは大体わかるけど・・・顔が犯罪者になってるわよ?」

見れば、柊が自分の身体を抱きしめて怪訝そうにこちらを見ている。

「あ、あんたっ!あたしをどうする気っ!?」


――っと、危うく人の道を外すとこだった。

「じょ、冗談だって。あはははは」




それから、母さんが柊に事情を説明した訳なんだが――

「・・・あんたバカじゃないの?」

開口一番のセリフがこれだ。

「そんな重要な術?を演習程度にほいほい使っちゃうなんて・・・アホね」

「むっ。大体なぁ、お前が手加減もなしに魔法をブッ放してくるから――」

「何よ。あたしの所為にする気!?」

「少しは手加減しろってんだ!あいにく、俺は美少女にブルボッコにされて喜ぶ性癖は持ち合わせてねーんだよっ!」

「っ!?び、美少女って!?・・・あ、あたしのこと?・・・えっと・・・あ、ありがとう」

らしくなく、真っ赤になってうろたえる柊。

「ほめてねぇよっ!!」

「えっ!?あれ?び、美少女って褒め言葉・・・じゃないの!?」

「褒め言葉だけどっ!ほめてねぇよっ!!」


パンパンッ

「はーい、二人が仲良いのはわかったから。話を次に進めるわよー」


「ちょっ、だから先生っ!?何であたしが――」

「とにかくね。このままじゃ、小日向くんが退学処分になってもおかしくない状況なのよ」

母さんは柊の抗議をあっさりスルー。

「で、セオリーだと目撃者の記憶を消すのがベストなんだけど」

言いつつ、視線は柊へ。


柊がびくっとして、
「あ、あたしの記憶、消すんですか・・・?」

捨てられた子犬のように、不安な様子で母さんの方を見上げる柊。

ううっ・・・なんか可愛いぞ・・・


「心配しなくてもいいわよ、柊さん。私は記憶消去のやり方には反対なの。だってそうでしょう?成長期の脳に余計な負担を掛けるのは良くないもの」

「えっ?それじゃ、どうするんですか?」



「・・・これはかなり強引な方法だし、柊さんにも迷惑がかかると思うけど・・・」


「「・・・」」

俺と柊は母さんの次の言葉を無言で待つ。



「・・・柊さん。雄真くんと結婚してくれないかしら?」



「「・・・は?」」



「あっ、そうね。二人とも年齢が足りないんだっけ。その間は婚約でもいいわよ?」
「でも、子供が出来たらマズいわよねぇ。その辺は二人で調整してちょうだい♪」



結婚?子供?
あれ?空耳かな。何か母さんが柊に「雄真くんと結婚してくれないかしら」とか言ってたような気がする、いやいやそんなことはねーだろ俺たちまだ高一っていうか今日知り合ったばっかだぜ第一なんで結婚なんだ意味がわかんねー、やっぱり空耳だ昨日からの疲れが溜まってるんだなよし屈伸でもするかいちにーさんー


俺が脳内の結論から、屈伸運動を始めた直後。


「っ!?ちょっとぉぉっ、先生ぃっ!!!け、け、結婚って何ですかーっ!!」

けたたましい柊の叫び声がステージ上に響いた。



「え?柊さんその歳で知らないの?困った子ねぇ。―いい?結婚っていうのは、男が18歳で女が16歳――」

「そんなことは知ってますっ!!!じゃなくて、記憶を消す代替案が何で結婚なのか聞いてるんですーっ!!」


「あら、それは簡単よ。家族なら術を秘匿する義務も発生しないからよ?」


「ぐっ・・・で、でも、だからって――」

ここで、柊はキッと俺を睨み。(ちなみに顔は真っ赤)

「ぜーーったいっ、イ・ヤ・ですーっ!!!」


ここまでストレートに否定される俺って・・・
あっ、ちょっと涙が出そう・・・


「あらあら、雄真くん。すっごく嫌われてるわねぇー」

「・・・ああ、ハンパなく嫌われてるな・・・しくしく」


「こんなのと結婚するくらいなら、記憶を消された方がましですっ!!」

「・・・ついにはモノ扱いか・・・しくしく」


「困ったわねぇ。やっぱり記憶消去は良くないし。――柊さん、ほんとにイヤ?」

「ほんとにイヤですっ!!!」

「・・・何回繰り返すんだよぅ・・・しくしく」



「――うーん、あまり気は進まないけど、もう一つだけ方法があるわ」

「それでお願いしますっ!!」

早っ!?即答かいっ!!

「え、でもいいの?内容は――」

「大丈夫ですっ!!結婚とか記憶消去とか結婚とかよりはましに決まってますからっ!!」


「――わかったわ、柊さん。後悔しないわね?」

「はいっ!!」

「おいおい、内容も聞かずに大丈夫か?」

「うるさいわね、雄真。あたしがいいって言ってるんだから、あんたは黙ってなさいよっ!!」

「でもだな、内容くらい聞いてからの方が――」

「ぜぇーーったい、あんたなんかと結婚なんてお断りなんだからっ!!」

「わかった、わかったって。だからちょっと落ち着け」



そうこうしてる間に、母さんは何やら携帯電話を取り出してどこかに電話していた。

「・・・・・・そこをなんとか・・・・・・・・でしょ?・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・大丈夫・・・・・・おごるから・・・・・・・・・ええ・・・・・・」

断片的に母さんの話し声が聞こえるが、一体どこに電話してるんだ?


「じゃあ、よろしくね♪」

ピッ

話がついたのか、母さんは携帯電話をポケットにしまいながらこちらへとやってくる。


「お待たせ〜。良かったわね、柊さん。交渉成立よ♪」

「ありがとうございますっ!!」

「お前、何の交渉だったのか知ってて言ってんのか?」

「う、うるさいうるさいうるさい。今から聞くとこよっ」


「でも、あの娘も相変わらずね。ケーキをご馳走するって言ったらすぐに首を縦に振るんだもの」

むっ。ケーキだって?・・・まさか


「さて、柊さん。あなたはたった今から『流身術』の使い手、”葉月流”の門下生よ。電話で師範代に話を通しておいたから、明日の朝の鍛錬から一緒に頑張ってね」

「やぁっっぱりかーーーっ!!!」

今度は俺の叫びがステージに響く。



「えっ?も、門下生ってことは・・・さっき雄真が使ってたやつを使えるようになるってことですかっ!?」

「もちろんよ。あなたの努力次第だけどね」

「ちょっと、かあ、御薙先生っ!!」

「あら、な〜に?小日向くん」

俺は母さんと柊を引き離し、小声で抗議する。


(何考えてんだよっ!?勝手に門下生にしてっ!!)

(しょうがないじゃないの。結婚はイヤだって言うんだもの)

(だからって、他にも方法が――)

(何言ってるの。元はと言えば、あなたが流身術なんか使ったせいでこうなったのよ?)
(・・・ぐっ、それはそうだけどっ!でも、詩織の奴が何も言ってなかったせいであって)

(だから、詩織に責任取らせたんじゃない。それに、雄真くんには何のデメリットもないはずよ?)

(――ん、あれ?そうだな。よく考えてみると別に実害はないのか?)

でも、俺の頭の中では何故か警鐘が鳴りっぱなしなんだが。
詩織と柊を会わせると、何かとんでもないことが起こりそうな気が・・・・・・考えすぎか?


「・・・あたしが、さっきのやつを・・・ふふふふふ・・・」

柊は何かさっきから一人でブツブツ言ってるし。


「はい。じゃあ、演習も終了、問題も解決ということで研究室に戻りましょう」

いろいろあったが、これにて杏璃vs雄真の演習が終了したのであった。
(ちなみに結果は、”杏璃の勝利”ということになった)




ステージを片付け、制服に着替えて研究室に戻り、
柊に朝の鍛錬のことや流身術について軽く教えた後、柊は寮に帰っていった。
(この間柊は、演習中に居なくなった神坂さんに何度か電話していたみたいだが、電源が切られているようで繋がらないと言っていた)


ちなみに、柊が帰った後も個人授業はもちろん続き、
俺は日が暮れるまで魔法式を頭に詰め込まされ続けたのは言うまでもない。。






―瑞穂坂学園、女子寮『杏璃の部屋』




バフッ

「・・・・・・ふぅ〜・・・」


杏璃は寮の自分の部屋のベッドに、仰向けに寝転がっていた。


鈴莉&雄真と別れた後、杏璃は校内をぐるっと一周し、春姫を探していたのだ。
結局、春姫は見つからず、携帯も相変わらず繋がらないので、諦めて帰ってきたのである。

「・・・春姫ったら、どうしたんだろ・・・」

御薙先生は、演習中にショックを受けて出ていったと言っていたけど。
あの演習中に、ショックを受ける場面などあっただろうか?

『わからん』と言っていたアイツの顔が浮かぶ。

「・・・確かにわかんないわー」苦笑。


アイツ、アイツの名前・・・

「・・・小日向雄真・・・ね・・・」

あれだけ、気安く男子と話をしたのは何年ぶりだろう。
魔法業界は女子の割合が高いのは言うまでもなく、それ以外でも話しかけてくる男子はどこかよそよそしいのだ。


たしかに雄真とは話易いけど、初対面であの態度はないでしょ。
挙句の果てには、け、結婚させられそうになるしっ。

ま、まあ、流身術はおもしろそうだから、付き合ってあげるけどねっ。



「そ、そんなことより春姫だわっ!んもーっ、どこ行ったのよっ!」



(カチャカチャ)←隣の部屋のドアの鍵を開ける音


「っ!?やっと帰ってきたわねっ、春姫っ!!」

勢いよく飛び起きた杏璃は、ドアへ突進。

ガチャッ!

「春姫っ!!今までどこ行って――」

杏璃は目を見張った。


「あっ、杏璃ちゃん」

えっ!?誰よこれ!?

「ごめんね、演習中に急に抜け出したりして。急に気分が悪くなって――今まで保健室で休んでたの」

あからさまな嘘。
保健室は一番初めに探した場所だ。

そんなことより、これが春姫!?
一体、何があったってのよっ!?



普通の人からすれば、いつもの春姫だと感じただろう。

しかし、
付き合いの長い杏璃は違う。

春姫が”いつも通り”を装っていることに気づいていたのだ。

目標に向かって迷いなく前を見据えていた目が、
今は見る影もなく、曇ってしまっている。


「・・・っ!?春姫っ、一体何が「ごめん、」」

「ごめん、杏璃ちゃん。まだちょっと気分が悪くて。今日はもう休もうと思うの。じゃあ、また明日ね。おやすみ」

「ちょっと、春――」

パタン

「・・・えっ」

ドアが閉められる間際の春姫の目には、涙が浮かんでいるように見えた。


「・・・・・・何があったっていうのよ・・・春姫・・・」


あんな春姫の顔、初めて見たかも。


・・・はっ!?
あたしまでしんみりしてどうするのよっ!?

あんな状態の春姫をほっとけるわけないわっ!
ライバルであり親友。
悩み事の一つや二つ、この杏璃様にまかせるのよっ、春姫っ!!


よしっ!

「明日、きっちりと問い詰めてやるんだからっ!!」


第八話へ  ⇒第十話へ


++++++++++++++++++++++++++++++++
☆★あとがき★☆

いやいや、拍手とかコメントありがたいです ^o^/

くださった方々、どうもありがとうございますm(_ _)m

内容は、、自分で書いてて何を書いてるんだろうかと・・・

こんな自分勝手な作品を読んでくださる方々には、感謝感謝です。

時系列的に、進むのが遅いですがちまちま進んでいく予定なんで、
これからもよろしくです。


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はぴねす!SS『魔力の行方』|第八話

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―魔法練習場、『ステージ』




トクッ、トクッ、トクッ、トクッ、トクッ、


自分の鼓動がやけに早く聴こえる。



ああ――ついに、ついにこの時がきたのだ。


魔法使いの道へと進むきっかけになったとある出来事――


それから10年余り――


ずっと目標にして頑張ってきた――


ずっとずっと会いたかった――



”彼”がいたからこそ、ここまで頑張ってこれたと春姫は思う。

”彼”の隣に並ぶにふさわしい女性になるために、ずっと努力していた。

今でもまだ足りないと思っている。

だって、”彼”はもっと先に行ってるだろうから。




その”彼”がすぐそこにいる。

さっき御薙先生にも念を押して確認したのだ。
「あなたくらいの年齢の弟子は、あなたと小日向くんだけよ♪」

以前にも聞いたことがあったが、そのときは―
「あなたくらいの年齢の弟子?いないわよ?」
って言ってたのに。その時はとてもがっがりしたけど。



と、とにかくっ

”彼”=”小日向雄真”だということは確実なのだ。
(同じ魔法の詠唱体系を持っているのは、家族か弟子だけだからだ)

その彼が、今まさに杏璃と魔法演習をしようとしている。

どういう理由で急に魔法演習をするようになったのか知らないけど。
(春姫は雄真と杏璃のやりとり中、ずっと過去に思いを馳せていたのだ)

あこがれで目標である彼が自分の前で魔法を使う。

しかも、彼の魔法を見るのは10年振り。


ドキドキしない方がおかしい。


杏璃ちゃんには悪いけど、絶対勝てないよ

彼は私よりもずーっと先に行ってるはずだから

(※注:春姫の中では過去の思い出が相当美化された上、あこがれの彼が自分の上をいっているというは決定事項なのだ)



春姫は両手を胸の前で握り締め、目をキラキラさせながらステージ上の雄真をじーっと見つめている。








さて、そんな期待をよそに――雄真はというと



「無理だ・・・・・・」



弱音を吐いていた。




先ほどの杏璃とのやりとりの後、それを聞いていた母さんが魔法演習という名目で杏璃との勝負を正式に決定。
すでにステージは使用許可をとっていたらしく(俺の練習のため)、そのまま魔法服へ着替えてステージに上がったんだが――


「流身術なしじゃ、一方的に魔法ブチ込まれて終わりなんてことにも・・・」

そうなのだ、ステージに上がる前に母さんに
「雄真くん。流身術は使っちゃダメよ?詠唱魔法のみで勝負しなさいね♪」

という感じでクギをさされた。魔法の訓練の一環ってことか?


「せめて、『瞬身』と『葉渡り』だけでも使えば何とか時間が稼げるんだが」

そう、この勝負の目的は勝つことではない。
同じ学年の実技2位の奴がどこまでできるのかを知ることだ。

つか、クラスが2つも離れた奴に勝てる訳ねーだろ。


「おい相棒。向こうさんはやる気満々みたいだぜ?」

「ん?」


向かい合った柊の方を見てみると――

魔法服?らしきものを身に纏って、マジックワンドをくるくる回している柊がゴングを待ちわびるボクサーのようにこちらをじっと見つめていた。

「好戦的な奴だな。つか、あれが魔法服か?」

柊が着ているのは、紺を基調としたワンピース。
だが、やけに露出度が高い。
肩の部分が丸見えである。
似合っているといえば、似合っているのだが・・・何というか、目のやり場に困る。


「・・・ま、まあとにかく。やれるだけやってみるか」

「相棒、顔が赤いぜ?」




そうこうしてるうちに、母さんがステージ横の何か実況席?みたいなとこに座り、マイクでしゃべり出した。(ちなみに神坂さんも隣にいる)

「はい、は〜い。柊さん、小日向くん、準備はいいかしら?」

「あたしはオッケーですっ!」
「・・・オッケー」

「じゃあ、始めるわね。演習の方式は『フリーバトル』。魔力の消費に制限はないわ。体力は両方とも1000ポイント。体力が先にゼロになった方、制限時間15分を超えた場合は残りポイントが低い方が負け。いいわね?」

ん?体力ポイント?

「はいっ!」
「ちょ、ちょっとまった!」

「ん?何かしら、小日向くん?」

「えーと、ダメージの判定とか計算は誰がするんですか?」

「それは「あんたそんなことも知らないのっ!?」」

柊が母さんの説明に勢いよく割り込んでくる、つか叫ぶな。

「・・・そういえば、魔法からしばらく離れてたんだっけ?じゃあ仕方ないわ、特別にこの杏璃様が教えてあげるわっ!!」

いや、頼んでねーし。

「魔法演習にはいろいろ種類があるんだから!例えば今からやるような試合形式の『フリーバトル』とか、交互に魔法を射ち合う『シュート』とか。で、どの演習の場合も使われた魔力、受けたダメージが”何とか”っていうシステムで管理されてるのよーっ」

”何とか”って何だよ、オイ。
つか、テンション高すぎ。

「でもって、自動的にアナウンスされる訳。『小日向雄真は1000ポイントのダメージを受けた』とか何とか」

即死かい、俺。

「なるほど、ロープレみたいなもんか。わかりやすいな」

「そうそう、ドラ○エとかファイナル○ァンタジーとかと同じよ」


「オッケー、わかった」



「じゃあ始めるわよー。二人とも準備はいいわね?」

母さんの確認に俺と柊がコクンと頷く。

その直後――

カァァーンッッ

ステージにゴングが鳴り響いた。






俺はすばやくゼクの封印を少し解いて、いつでも詠唱魔法を使える状態に。


『小日向雄真は2ポイントのマジックポイントを消費した♪』

と、スピーカーからやたらとハイテンションなアニメ声の音声が流れた。

「・・・ああ、そうか。この状態は常に魔力を放出している状態だからか」
「燃費悪いなぁ。つか、なんでアニメ声?」

毎回この声を聞くのか?
ははは、ウザイぞ。




柊はというと――

「まずは小手調べよっ!」

マジックワンドを構え、詠唱開始。

「エスタリアス・アウク・エルートラス・レオラッ!!」


飛来する複数の魔法球。

式を見た感じだと、クラスF。クラスFなら!

「エル・アムスティア・ラティル・アムレスト!!」

防壁を展開。


ドドドドドッン


ふぅ、何とか受けきれたか。

『柊杏璃は10ポイントのマジックポイントを消費した♪』
『小日向雄真は4ポイントのマジックポイントを消費した♪』

ははは、ウザイぞ。




そんな感じで、ちょっと魔法の射ち合いっぽい展開がしばらく続き――

「うふふふふ。少しはやるようね、雄真っ!!」

「そりゃ、どーもっ!!」

「じゃあ、これはどうかしら?」

柊はそう言いつつ、さっきまでとは異なった詠唱を開始。

「オン・エルメサス・ルク・アルサス・エスタリアス・アウク・エルートラス・レオラッ!!」

げっ、クラスEか!?

「エル・アムスティア・ラル・セイレス・ディ・ラティル・アムレスト!!」

俺はさっき魔法書で覚えたばかりのクラスEを――


バリンッ


「くっ!そんなに甘くはないか!」

俺は防壁を突き破った柊の魔法の矢の直撃に備えて、両腕を交差して身体をかばう。

――が、
身体に当たると思われた瞬間に魔法の矢がフッと消えてしまった。

『小日向雄真は40ポイントのダメージを受けた♪』


「むっ?どうなってるんだ?」

俺が不思議そうに首をかしげていると、

「あんたバカじゃないの?演習で魔法が直撃するわけないじゃないの。ステージはどんな魔法も直撃前にキャンセルするようにできてるのよっ!」

なるほど、そういうことか。
でも、ダメージだけはちゃんと計算されると。



「ほらほら、どんどんいくわよ〜っ!ボーっとしてたら、すぐに終わっちゃうんだからっ!」

続けざまに柊は、詠唱、詠唱、詠唱。(全部クラスE)

飛んでくる、魔法球、魔法の矢、氷の塊。

「やっっぱりこうなったかぁぁあぁっ!!!」

叫びつつ、ドタバタと逃げ回る惨めな俺。


「あはははっ!!どうしたの、雄真っ!!逃げ回ってばかりいないでちょっとは反撃したらどうなの?あはははっ!!」

「くっ、柊のやつ手加減なしかよっ!」

「あはっ!なんか楽しいわっ!!いつもは春姫にやられっぱなしだから、いいストレス発散になるわっ!」

「くっそ〜、何がストレス発散だっ!流身術が使えればっ!」


恐るべし杏璃、もうやりたい放題である。







――さて、その様子を見ている方々はというと。




「・・・・・・う・・・そ・・・・・・・・・」



顔面蒼白な春姫がいた。




目の前の光景が信じられなかった。

憧れで目標の”彼”が、杏璃程度(すごく失礼)に手も足も出ないでいるのだ。

今も必死で杏璃の魔法を避けようとドタバタとステージ上を動き回っている。


そ、そんな・・・・・・嘘だよ・・・・・・
もしかしてあの”彼”じゃない・・・・・・ううん・・・間違いないよ・・・


また、雄真が杏璃の魔法の直撃を受ける。


・・・い・・・や・・・・・・
いやいやいや、もう見たくないっ!


ガタッ

春姫は実況席から立ち上がると、一目散に出口へ向かって走りだす。

ステージ上で演習中の二人は気づかない。


――実況席にいる鈴莉だけが気づき、
「あらあら♪」とのん気なセリフをつぶやいた。






『小日向雄真は40ポイントのダメージを受けた♪』
『小日向雄真は12ポイントのダメージを受けた♪』
『小日向雄真は57ポイントのダメージを受けた♪』

「ああもう、うるせぇ!」

今すぐスピーカーのコードを引き抜いてやろうかと思ったが、今はそれどころではない。
柊の攻撃は単調であるものの、防壁を張ることができないため避けるしかないので、なすすべもなくダメージが蓄積していく。

「むぅ、ぐっ!」

この演習という名目の勝負の目的は、柊の実力を知るためである。
なので、実力を知るという意味では身をもって体験は出来たのだが――

「・・・このままで終われるかっ!!」


小日向雄真は、いうまでもなく男の子である。
さすがに魔法でとはいえ、小柄な美少女にフルボッコにされて悔しくないはずがない。
まあ、中には美少女にフルボッコされて喜ぶ特殊な性癖の持ち主もいるが・・・

とにかくである。
この勝負、雄真は杏璃に一矢を報いねば終われないのだ。



「やるぞ、ゼク!」

「ケケケケッ、柄になく熱くなってるじゃねーか相棒っ!」


俺はすばやくゼクの封印を少し解き、身体強化用として身体に纏う。

『小日向雄真は50ポイントのマジックポイントを消費した♪』

アニメ声を軽く無視。
自然体で身体を起こし、両手を前に。


次々と飛んでくる、魔法球、魔法の矢・・・etc


それらが直撃かと思われる瞬間――


雄真の身体が流れる葉っぱのようにスッとそれらを避けていく。

葉月流流身術『葉渡り』。

独特の歩方と足の強化により、遠距離攻撃を避けながら相手に近づいていくという流身術である。



「なっ!?何よそれはっ!?」


杏璃が驚くのも無理はない。
何しろ、魔法を射てば射つほど雄真が距離を詰めてくるのだ。

「くっ!?」

さすがの杏璃も一旦魔法を射つのをやめる。


「・・・何だかよくわからないけど、ここまでやるとは思わなかったわっ!雄真っ!!」


両者の距離、約15メートル。
雄真は自然体で、杏璃はマジックワンドを構えて対峙する。


「まさか、春姫以外にこの魔法を使うとは思わなかったわ・・・覚悟するのねっ!」

「覚悟するのは、お前だ!柊っ!!」


「オン・エルメサス・ルク・ゼオートラス・アルクサス――」
「エル・アムダルト・リ・エルス――」

両者詠唱開始。

「――ディオーラ・ギガントス・イオラッ!!」
「――ディ・ルテ・エル――」

杏璃が魔法を射つ――とほぼ同時に雄真の姿が掻き消える。


「え?」
「――アダファルス!!」

杏璃の前に瞬間的に移動した雄真は、最後の一音を開放。
そう。今朝伝授されたばかりの『葉討』である。



「・・・」
「・・・」



激突の後、一転して静まり返るステージ。

杏璃と雄真は結構な近い距離で、互いに魔法を唱えた体勢のまま固まっている。
特に杏璃は、何が起こったかわからないという感じで目をパチクリとさせている。


と、

『柊杏璃は2500ポイントのダメージを受けた♪』
『小日向雄真は3200ポイントのダメージを受けた♪』



カァァーンッッ


リングにゴングが鳴り響き、杏璃vs雄真の勝負が終了した。





「・・・えっ!?引き分け!?なんで!?何が起こったのよーっ!!」

再起動を果たした柊は、ステージ上で絶叫。うるせー。


「くそぉ、やっぱりまだ実戦じゃ使えないなコレは。使ったほうのがダメージ大きい技なんて、自爆だな」

ステージ上でなければ、今朝のように吹っ飛ばされていただろう。
これはもっと練習せねばと思っていると――

ポカッ

「痛っ!?誰だ!?」

「誰だ?じゃないわよ!あたし以外に誰がいるのよ!それより、あんた何したのよっ!何で引き分けなのよっ!せ・つ・め・いっ、しなさいよーっ!!」

柊の奴が、至近距離でキーキー喚き立てる。

近っ!?ただでさえ露出が激しい服なのに、こんなに近いと目のやり場がっ!


目のやり場に困り、ふと母さんがいる実況席の方を見てみると――

「・・・あれ?神坂さんは?」

「ん、何?春姫がどうしたの―ってあれ?」



この時になってようやく、春姫が居なくなっていることに気づいた二人であった。



第七話へ  ⇒第九話へ


++++++++++++++++++++++++++++++++
☆★あとがき★☆

半年も間が空いたかと思いきや、連続投稿。

ごめんちゃい><;

読んでくれてる方々には本当に申し訳ない;;

もう、作品自体もオリジナルからは程遠い展開になってしまいました・・・

これからも好き勝手に書いていきますが、どうぞよろしくお願いしますorz



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はぴねす!SS『魔力の行方』|第七話

□■━ 4月8日 ━■□



―小日向家、庭


「ふあぁ〜〜」

朝の日差しはポカポカと暖かく、起き抜けの身体を再度眠りへと誘う。


「こらっ、雄真。寝ぼけている場合ではないぞ。お主を”真の婿候補”にするために、今日からさらにビシバシいく予定じゃ。ぼへーっとしておると怪我をするぞ?」

「ふぁい、ししょ〜」

ドゴッ

「イテッ!何も殴るこたねーだろっ!」

「いつまでも寝ぼけておるからじゃ!そんなことでは、『流身術』を極めること叶わぬぞっ!」

昨日の夜のやりとりの後、詩織のテンションが妙に高い。
どうやら、本気で俺を”真の婿候補”とやらにするつもりらしいのだ。

俺なんかを”婿候補”にしたがる詩織の気持ちもよくわからんが、否定すると昨日みたいなことになりかねん。
しばらくは、様子を見るしかねーか。


「うーっし!準備はいいぞー、師匠」

俺は軽く身体をストレッチさせながら、詩織に向き直る。

「うむ。では早速と言いたいところじゃが、今日は体術の鍛錬はナシじゃ」

「・・・?何でだ?」

「ふふふふふ・・・、それは――」

「それは?」

「新たな『流身術』を伝授するからじゃあっ!!」

詩織はビシッと俺を指さし、あまりない胸を張る。

「新たな『流身術』?」

「その通りじゃ!お主を”真の婿候補”とするためには、『流身術』をどんどん覚えていってもらわねばならん!」

「まあ、”真の婿候補”はともかく、どんな『流身術』を教えてくれるんだ?」

「うむ。そうじゃな、実際に見たほうが早かろう」


そう言って詩織は、いつからかそこにあった岩(なんで庭にこんなものが・・・)に向き合って右手を前に出す。

「―ラ・ヴァース・ド・ルーア・フェ・ルエ・ヴァシュテ!!」

詩織の右手から魔法球が飛び出し、岩に着弾。

ドガッ

岩にちんまりとした傷ができた。


――ん?これが新しい流身術?
ただの詠唱魔法じゃねーか?


「さて、今のはただのクラスFの魔法球じゃが、これに『流身術』を合わせると―」


今度は流身術を使うときのように、身体に魔力を纏う詩織。

「―ラ・ヴァース・ド・ルーア・フェ・ルエ――」

さっきと同じように詠唱――途中で詩織が掻き消える。

「・・・え?」

それとほぼ同時。

「―ヴァシュテ!!」 ドッッッゴッーンッ!!

爆音が響く。


バッと岩の方を見てみると―
そこには、右手を前に出した状態の詩織と粉々になった岩の残骸。


「・・・ふぅ、こんなもんじゃな」

詩織は岩の残骸を見て、うむうむと満足そうだが、

「・・・なあ、師匠。俺には何が起こったのか全然わからんのだが」

俺が当然の疑問を口にすると、

「当然じゃ。一目で理解出来るほど簡単な術ではないぞ?」

「じゃ、説明してくれ」

「うむ」と詩織が頷き、説明が始まった。



「まず、今の術の名を『葉討(はづち)』と呼ぶ。基本的には、身体強化魔法と詠唱魔法を合わせた技じゃ」

「身体強化魔法を使いながら、詠唱魔法を使うってことだな」

「うむ、その通りじゃ。しかし、単に合わせて使うだけではないぞ?身体強化魔法の応用で、詠唱魔法の威力を収束し、攻撃魔法の威力を増大させることが可能なのじゃ!」

「威力を増大?」

「見ておったじゃろうが!最初に使った詠唱魔法と『葉討』で使った魔法のクラスも種類も同じものじゃったろう?」

そういえば、

「・・・そうだったな」

同じ魔法であの威力の差か。

「さて、ここからがミソじゃ。通常、攻撃魔法は至近距離で使用するようなものではないのはわかるじゃろ?」

「ああ、自分も危ないからな」

「うむ。しかし、攻撃魔法の威力が一番高いのが放たれた直後なのじゃ。それは、目標に向かって飛んでる間にも魔力が消費され、威力が弱まっていくからじゃな」

「ふむふむ」

「『葉討』は、攻撃魔法を至近距離で放つことを可能とするだけではなく、攻撃の方向をコントロールすることで、同じ魔法の威力を5倍も高める術なのじゃっ!」

「「おお〜」」

「流身術では、『瞬身』で相手の攻撃をかわしつつ距離を詰め、『葉討』を撃ち込むのが標準的なスタイルじゃな」

「なるほど」



「それでは、実践あるのみっ!じゃ。あの岩に向かって『葉討』を撃ち込むのじゃ!」

そう言って、詩織はまたいつのまにか出現していた岩(だから何で庭に・・・)を指し示す。


「実践あるのみっ!はいいが、なにもアドバイスなしかよっ!?」

「さっきの妾を思い出してやってみるのじゃ。大丈夫、お主なら出来る!」

「・・・ほんとかよ」




「いいか?ゼク」

「いつでもいいぜぇ〜」

まずは身体強化魔法。

そして、俺は詩織のしてた通り、右手を前に出し詠唱を開始。

「エル・アムダルト・リ・エルス・エル――」


「―アダファルス! げっ!!」 ちゅど〜ん!!


「・・・がふっ」


「・・・だめじゃったか・・・」



さて、雄真のセリフだけでは何が起きたかわからないので、説明しよう。

詠唱を開始した雄真は、最後の一音を残して瞬身を発動。
岩の前まで一瞬に移動した彼は、最後の一音を同時に開放。
しかし、
至近距離での攻撃魔法に耐えられず、岩とは反対方向に吹っ飛ばされる。
結界まで吹っ飛ばされ、背中から衝突。
くずれおちる。

以上、説明おわり。



「お〜い、雄真よ。生きておるかー?」

「・・・」

「おい、相棒!なんでぇこの様はっ!」

「・・・」


それから5分後。


「・・・あぅ〜、ひどい目にあった」

ようやくダメージから回復した俺は、縁側に座って茶を啜っている。
となりでは、詩織が同じく茶を啜りながら、

「ずず〜っ、はふー。先程の失敗は、身体強化不足が原因じゃ。クラスFといえどもあの威力、きっちり衝撃を受け止めなければああなるのは体験した通りじゃ。ずずっ」

「気づいてたんなら、途中で止めろよな。―ったく」

「ずー。身をもって体験、ずず〜、しなければ、はふ、わからんことも、ずずず、あるからの、ずずずずずっ」

「・・・おかげでひどい目にあったぞ。つか、茶飲みながらしゃべんな」

「ずずー。とにかく、これからは毎朝、『葉討』の訓練を追加じゃからな?ずっずー」

「へいへい」


そんなこんなで、朝の鍛錬は終了したのであった。







―午前11時 ”御薙教諭研究室”



「ぐむむむむ・・・」

俺は、魔法書と睨めっこしていた。



朝の鍛錬を終え、いつも通りシャワー浴びて、詩織と共に朝飯食べたあと。

すこしは寝れるかなぁ〜なんて思いつつも、いやいや寝たら起きれねぇぞみたいな欲求と戦ってみたりしていると、学校に行く時間になってしまい、仕方なくもそもそと制服に着替えて学校に行き、御薙教諭研究室に入るなり、やたらハイテンションな母さんから熱烈な歓迎を受けつつもそれをうまく受け流している自分を客観的に見て、すごくね?とか思ったりして。

そして、昨日と同じ個人授業が始まって1時間。
何やら母さんはやることがあるらしく奥でごそごそとしていて、自習を言い渡された俺は現在進行形で魔法書と睨めっこしている。



「・・・頭痛てぇ」

普段からそんなに使わない脳を昨日から酷使しすぎて、脳が悲鳴を上げているよーだ。

「だいたい何だよこの魔法書の量は」

机に乗っかっている魔法書の数は、どうみても10冊は超えている。

「絶対無理っ!こんなの全部覚えれるわけねぇ!」

ガバッと机に突っ伏す俺。


「情けねぇな、相棒!まだ昨日の今日だぜぇ?」

ゼクがあきれ声?で話しかけてくる。

「ゼクか・・・、俺はもうだめだ・・・あとをたのむ・・・」

「・・・まったく、相棒は――」


コンコンコン

「「ん?」」

コンコンコン


ノックの音、だよな?
お客さん?

俺は突っ伏していた身体を上げ、

「母〜さ〜んっ!誰か来たよーっ!」

奥の方に向かって呼びかける。


ガサゴソガサゴソ

「ごめ〜ん、今手が離せないのー。ちょっと出てくれるー?」

「へーい」

つか、母さんはさっきから何してんだ?



俺は椅子から立ち上がってドアの方へ―

コンコンコン

「はいはい、今開けるって」

ガチャ


「「「・・・・・・・・・」」」


ドアを開けると、二人の美少女が立っていた。
陳腐な言い方だが、それしか形容する言葉がないのだ。
二人とも瑞穂坂学園の制服を着ており、黄色いリボンをしているので同じ学年か。

一人は鳶色の髪の少女で、何か言いかけていたまま固まっている。

もう一人は、黄色い髪をツインテールにした小柄な少女で、こちらも固まっている。



そのまま数秒が過ぎ、
無言の重圧に耐えかねた俺が口を開こうと――

「あーーーーっっ!!!」

黄色い髪の少女(めんどいから黄色と呼ぶことにする)が、俺を指さしていきなり大声で叫びだす。

「な、なんだ!?」

俺、何かやらかしたか!?
もしくは生き別れの兄に似ているとか!?

「あんた、”マジックワンドが自己紹介男”じゃないの!」

なんだその名前は。

「む、失礼な黄色だな。俺は小日向雄真だ。確かに、ゼクが自己紹介したのは認めるが――」

「誰が、黄色よっっ!!」

「気に入らんか?じゃあ、イエローでどうだ?」

「英語になっただけでしょっ!!」

おおう、こいつはおもしれぇ。
ハチとは違ったからかい甲斐のある奴だ。くせになるかもしれん。


「ちょっと、杏璃ちゃん!」

黄色もといイエローがガルルル噛み付いている隣では、鳶色さん(心情的に”さん”付け)が必死に黄色を止めようとしている。

うむ、こっちの方が話がわかる雰囲気だな。


「え〜と、鳶色さん?ここには何の用?」


「・・・鳶?ああ、私は神坂春姫っていいます。そちらの娘は――」

「いいわよ、春姫。名前くらい自分で名乗るわ」

「あたしは、柊杏璃。春姫のライバルよっ!!」

ライバル?
ああ、そうか。

「大変だな、二人とも。同じ奴を好きになったんだな?いわゆる三角関係――」

「んなわけないでしょっ!!」



そんなこんなで、二人が御薙教諭研究室に来た理由を聞いて中に入れるまで約20分の時間を要したのであった。







「はい、どーぞ♪」


ご機嫌な母さんが、俺たち(俺、神坂さん、柊)が席についたテーブルの上に紅茶が入ったカップを置いていく。


なんでこんなことになっているかというと。


つまりは、御薙先生に魔法の質問をしにきた二人を中に入れ、母さんを呼びにいくと。
「あら〜、神坂さんに柊さん、いらっしゃい♪」「あっ、そうそう。新しい紅茶が手に入ったのー。飲む?飲むわよねー?」「ささ、みんな座って座って♪ゆ、小日向くんもほらほらー」
というわけである。


俺はとりあえず、カップに口をつけ紅茶を一口ふくむ。

「・・・ふぅ」

結構うまいな。
ん?でもちょっとあっさりし過ぎかなー。ミルクでも入れてみるか、いや待てよここはレモンをスライスしたものを――


「気になってたんだけど」

俺がレモンのスライスがないか探しに行こうとしたところ、柊が唐突に口を開いた。
つか、なんでそんなツンツンしてるかね。

「雄真・・・だっけ?あんた何でここにいるのよ?」

いきなり名前を呼び捨てかよ!

「あー、それはだな。何というか・・・」

母さんと親子ということは秘密なんだったよな。
う〜む、何と言うべきか。

すると、違う方向から返答があった。

「小日向くんはね、私の弟子の一人なの」

「「「!?」」」

「えーーっ!?でも、先生、そんなこと一言も・・・」

神坂さんがかなり驚く。

「あら、言ってなかったかしら?でも、私の弟子ってことでそんなに驚くなんてなんでかしら?ムフフ♪」

「えっ・・・えっと・・・その・・・」

何故か神坂さんは顔を赤くして、俯いてしまった。

「小日向くんは、すいぶん前、神坂さんが弟子になるさらに前に弟子になったんだけど、いろいろな事情でしばらく魔法から離れてたの」

なるほど、そういう設定か。
ならば、俺のハリウッド俳優並の演技で合わせねばなるまいっ!

「御薙先生の言う通りダヨ。それで、瑞穂坂学園に入学を機に弟子に復活したってわけナノ」

あれっ?語尾がちょっとおかしいか?
ま、いいだろ。。

「・・・なるほどね、雄真がここにいる理由はわかったわ」

ふぅ、何とか誤魔化せたな。
さすが俺、ハリウッド俳優も真っ青だぜ。


俺は、大分冷えてしまった紅茶の残りを飲もうとコップを傾け――

ダンッ!

いきなり柊が机を叩いて立ち上がった。

そして――俺をまた指さし、

「勝負よっ!!雄真っ!!」

ぶっ!っと紅茶を吹き出しそうになった。危ねぇ。


「いきなり何だ!?意味わかんねーよ!」

「あんた、勝負の意味もわかんないの?」

「そういう意味じゃねぇ!何でいきなり勝負なんだよ!!」

「光栄に思いなさいよ、入学試験実技2位の柊杏璃が相手してあげるんだから」

「何ぃっ!?お前が2位!?嘘だろ?」

「嘘じゃないわよ?ちなみに、1位は春姫」

「げっ」

何ぃっ!?このおっとりした感じの神坂さんが1位で、
あのガルルル爆弾ツインテールが2位だとぅ!!

ふと母さんに視線をやると、こくりと頷いた。
どうやら本当のようだ。

ん〜、待てよ。これはチャンスじゃねーか?同じ学年の魔法実技のトップ2がここに居るんだぞ。柊は2位らしいが、実力を知っておくのもいいんじゃないか?今の俺がどのくらいのレベルなのか気になるし。よしっ。


「・・・オッケーだ。この勝負、受けたっ!!」


こうして、杏璃vs雄真の勝負が決定したのであった。



第六話へ  ⇒第八話へ


++++++++++++++++++++++++++++++++
☆★あとがき★☆

すんませんm(__)m

とりあえず謝っておきます〜。

リアルが忙しくて全然書く暇がなかったんです、本当です。
えっ?ラノベの感想は書いてるじゃん?それは…すみません><

もう本当に時間が経って、よくわからんことになってますが、
とりあえずヒロインがやっとこさ出てきました。遅い。

つか、杏璃は書きやすいなぁ。

次回は、よくわからん杏璃vs雄真のお話。



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